保育士の配置基準の見直しについて徹底解説【2024】

保育士の悩み

2024年度から、保育士の配置基準が大幅に見直されることが発表されました。

この見直しは、保育の質を向上させるための重要な一歩であり、保育士や保護者の注目を集めています。

本記事では、配置基準の具体的な変更内容、その背景、そして影響について詳しく解説します。

目次

  1. 配置基準の歴史
  2. 現在の保育園の現状
  3. 自治体独自の配置基準
  4. 緩和措置
  5. まとめ

1. 配置基準の歴史

1947年に制定された児童福祉法第45条「児童福祉施設最低基準」により、保育所の最低基準が設けられました。

この基準は、子どもの安全と保育の質を確保するために必要な最低限の保育士数を定めたものです。

保育士の配置基準は1948年に初めて制定されました。

その後、保育の質向上を目指して数回の改定が行われ、以下に、主要な改定の段階を詳しく説明します。

1948年

初めての配置基準が制定。

この基準では、1歳児以下の子ども10名に対して保育士1名、2歳以上の子ども30名に対して保育士1名というものでした。この基準は、戦後の急速な人口増加と共働き家庭の増加に対応するために設けられました。

1965年

改定が行われ、2歳児以下の子ども8名に対して保育士1名、3歳以上の子ども30名に対して保育士1名という基準に変更されました。この改定は、保育の質を向上させるためのものでした。

1969年

再び改定が行われ、1歳児以下の子ども6名に対して保育士1名、3歳以上の子ども30名に対して保育士1名という基準に変更されました。この時期には、保育士の専門性が重視されるようになり、保育の質をさらに向上させるための取り組みが進められました。

1998年

この年の見直しでは、0歳児の配置基準が新たに導入されました。

乳児(0歳児)の子ども3名につき保育士1名、1~2歳児の子ども6名につき保育士1名という基準が適用されるようになりました。この改定は、乳幼児期の発達における個別ケアの重要性が認識された結果です。

1998年時点での配置基準は以下です。

乳児(0歳児):子ども3名につき保育士1名
1~2歳児:子ども6名につき保育士1名
3歳児:子ども20名につき保育士1名
4歳以上:子ども30名につき保育士1名

画像引用:児童福祉施設最低配置基準(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1006-7e_0005.pdf

2024年

最新の改定が行われ、4・5歳児の配置基準が「子ども30人につき保育士1人」から「子ども25人につき保育士1人」に、3歳児の配置基準が「子ども20人につき保育士1人」から「子ども15人につき保育士1人」に改正されました。

改定後の配置基準は以下です。

乳児(0歳児):子ども3名につき保育士1名
1~2歳児:子ども6名につき保育士1名
3歳児:子ども15名につき保育士1名
4歳以上:子ども25名につき保育士1名

この配置基準の見直しには、以下のような背景と目的があります。

安全確保の難しさ

現行の基準では、保育士1人が担当する子どもの数が多く、安全確保が困難でした。「不適切保育」というワードも、この状況の中で生まれた言葉として話題になりました。

保育士の負担軽減

多くの子どもを担当することで、保育士のストレスや負担が増大していました。

これらの課題を解決し、保育の質を向上させるために、配置基準の見直しが行われることとなりました。


2. 現在の保育園の現状

多くの保育園では、保育士1人あたりの子どもの数が多く、個別配慮まで行き届かない状況が続いています。また、保育士の負担が大きく、離職率の高さも問題となっています。

保育士の配置基準見直しは、こうした現状を改善するための重要な取り組みです。

諸外国の配置基準

諸外国の保育士配置基準を、以下の表にまとめました。

国名0歳児1歳児2歳児3歳児4歳児5歳児
日本3:16:16:115:125:125:1
カナダ4:14:14:18:18:18:1
オーストラリア4:14:14:111:111:111:1
イギリス3:13:14:18:18:18:1
韓国3:15:17:115:120:120:1
保育士配置基準(子どもの数:保育士の数)

この表から分かるように、日本の保育士配置基準は他国と比べて、特に3歳児以上の子どもに対して非常に多くの子どもを担当することが求められています。

このため、保育士の負担が大きく、保育の質が低下するリスクが高いと言えます。

配置基準違反の影響

配置基準を守らない場合、保育園には以下のような影響が及びます。

認可の取り消し

配置基準を満たさない保育園は、認可が取り消される可能性があります。

運営停止

基準違反が続く場合、運営停止命令が下されることがあります。

保育士の負担増加

基準を守らないことで、保育士の負担が増加し、結果的に保育の質が低下する恐れがあります。

3. 自治体独自の配置基準

一部の自治体では、国の基準よりも厳しい独自の配置基準を設けています。以下の2都市の例を紹介します。

埼玉県富士見市(公立・私立)

1歳児・・・・・ 4:1(国は6:1)

2歳児・・・・・ 6:1(国の基準と同じ6:1)

3歳児・・・・・13:1(国は20:1)

4歳児・・・・・18:1(国は30:1)

5歳児・・・・・25:1(国は30:1)

横浜市(私立)

1歳児・・・・・ 4:1(国は6:1)

2歳児・・・・・ 5:1(国は6:1)

3歳児・・・・・15:1(国は20:1)

4、5歳児・・・ 24:1(国は30:1)

4. 緩和措置

配置基準の見直しに伴い、いくつかの緩和措置も導入されています。

主な例として、朝夕の延長保育時間帯には、保育士1名と子育て支援員などを構成することが可能となり、保育職員の負担軽減と柔軟な対応が実現されています。

また、一時保育においても短時間利用者が多い場合に保育士の配置基準が緩和されることがあります。

地域によっては、保育士の確保が困難な状況下で一時的な基準緩和が認められる場合もあり、小規模保育施設でも定員に応じた基準の緩和が取られています。

これらの措置により、保育士の負担を軽減し、保育の質を維持しながら柔軟な運営が可能となっております。

5. まとめ

保育士の配置基準見直しは、保育の質を向上させるための重要な一歩です。

新しい基準により、保育士の負担が軽減され、子どもたちに対するきめ細やかなケアが可能となります。

さらに、諸外国の配置基準と比較することで、日本の保育士配置基準の改善がいかに重要であるかが明確になります。

今後も、保育の現場での実践と改善が求められます。

保育士等のキャリアアップ研修を通じて、スキルを高め、より良い保育環境を作り上げていきましょう。

保育士の皆さんが安心して働ける環境を整えることが、子どもたちの健やかな成長につながるのです。

参照

厚生労働省「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」

(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82069000&dataType=0)

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