保育所保育指針の改定に向けた議論が進む中、2026年6月5日の会議で、乳幼児期の「評価」の考え方がより明確になりました。
他の子と比べたり、決められた基準にどこまで到達したかを見たりするのではなく、
一人一人の姿からその子のよさや可能性を丁寧に捉えていく。そんな評価の考え方です。
ただし2026年8月現在、保育所保育指針そのものはまだ改定されていません。
「保育の“評価”って、子どものできる・できないを見ること?」
そんな疑問を持つ保育士さんも多いのではないでしょうか。
この記事では、次のことを整理します。
- 保育所保育指針の改定は、今どこまで示されているのか
- 今回の中心キーワード「乳幼児理解に基づく評価」とは何か
- 「できた・できない」だけで見ないとは、どういうことか
- 「10の姿」との関係、現場の保育士が今から意識したいこと
専門用語も出てきますが、できるだけ現場の保育とつなげて見ていきます。
前回の記事では、保育所保育指針の改定について「今どこまで分かっているのか」を全体的に紹介しています。
保育所保育指針の改定で「評価」はどうなる?子どもの姿をどう捉えるかをわかりやすく解説
https://human-resource.net/hoikushishin-point
目次
- 0.1 2026年6月、新たに明確になった「評価」の考え方
- 0.2 「できた・できない」を見ることがダメなの?
- 0.3 「水遊びを楽しんだ」の、その先を見る
- 0.4 記録は「書いて終わり」ではない
- 0.5 子どもの姿を捉えることは、自分たちの保育を振り返ることでもある
- 0.6 「10の姿」は、できた・できないを確認する表ではない
- 0.7 「評価」と聞いて、新しいチェック表を作る必要はある?
- 0.8 園内研修は「一枚の写真」からでもできる
- 0.9 取りまとめ案を踏まえて、普段の保育で意識したい3つのこと
- 0.10 2026年8月現在、保育所保育指針はまだ改定されていない
- 1 まとめ|「できた?」だけではなく、「この子の中で何が育っている?」
2026年6月、新たに明確になった「評価」の考え方
2026年6月5日に、文部科学省の「幼児教育ワーキンググループ」と、こども家庭庁の「保育専門委員会」の合同会議が開かれました。
そこで示された取りまとめ案では、「乳幼児理解に基づく評価」について、
他の乳幼児との比較や、一定の基準に対する達成度を捉えるものではない
ということが、より明確にされました。
そして、資料の中では、
「乳幼児一人一人のよさや可能性」を見取る
という表現が使われています。
「見取る」という言葉は、普段の保育ではあまり使わないかもしれません。
簡単に言えば、
目の前の子どもの姿を丁寧に見ながら、その子の育ちや学び、よさ、可能性を捉えること
と考えると分かりやすいと思います。

「できた・できない」を見ることがダメなの?
ここは誤解したくないところです。
「他の子と比べない」からといって、
子どもが何をできるようになったのか。
以前と比べてどんな変化があったのか。
そうした育ちを見なくてよい、という意味ではありません。
大切なのは、「できた・できない」だけで子どもを捉えないことです。
例えば、4歳児が積み木で遊んでいる場面を考えてみます。
昨日までは一人で積み木を並べていた子が、今日は近くにいた友達に、
「ここ、一緒につなげる?」
と声をかけました。
積み木を何個積めたかだけを見ると、大きな変化はないかもしれません。
でも、その子の姿を丁寧に見ると、
- 友達の存在を意識した。
- 自分の考えを言葉にした。
- 一緒に遊ぼうと自分から働きかけた。
- 一人で楽しんでいた遊びが、友達との遊びへ広がり始めた。
そんな育ちが見えてきます。
保育における評価では、こうした結果だけでは見えない子どもの変化や過程も大切にしていく必要があります。
「水遊びを楽しんだ」の、その先を見る
もう一つ例を考えてみます。
園庭で何度も水を流して遊んでいる子どもがいました。
記録には、
「水遊びを楽しんでいた」
と書くことができます。
もちろん、これは間違いではありません。
でも、もう少し子どもの姿を見てみるとどうでしょう。
- 水を流す場所を何度も変えている。
- 途中で水が止まると、土を掘っている。
- 友達が作った水路を見て、自分の水路とつなげようとしている。
- 「こっちから流したらいくんじゃない?」と友達に話している。
そこまで見ると、
水の流れを予想しながら、自分なりに試し、うまくいかなければ方法を変えている
という姿が見えてきます。

同じ「水遊び」でも、子どもの中では、
- 気づく。
- 考える。
- 試す。
- 工夫する。
- 友達に伝える。
- また試す。
という経験が重なっています。
今回の改定に向けた議論で大切にされているのは、こうした遊びの中にある学びを丁寧に捉えることです。
記録は「書いて終わり」ではない
今回の取りまとめ案では、評価だけでなく、記録をその後の保育にどう生かすかも大切にされています。
普段の保育では、
- 日誌を書く。
- 個人記録を書く。
- 写真を撮る。
- ドキュメンテーションを作る。
など、さまざまな方法で子どもの姿を残しています。
でも、記録すること自体が目的ではありません。
記録を見ながら、
- 「この子は何を面白がっていたんだろう?」
- 「どうして何度も繰り返していたんだろう?」
- 「昨日と比べて何が変わった?」
- 「次はどんな環境を用意すると、もっと遊びが広がるかな?」
と考える。
さらに、それを職員同士で話してみる。
その中で、
- 「私はこう見えた」
- 「こんな気持ちだったのかもしれない」
- 「昨日の経験とつながっているんじゃない?」
と、一人では気づかなかった子どもの姿が見えてくることがあります。
今回の資料でも、子どもの姿を記録し、その記録をもとに遊びの中の学びを捉え、園内で対話しながら振り返ることが示されています。
そして、その振り返りを、次の環境や援助の見直しにつなげていくことが大切だとされています。
子どもの姿を捉えることは、自分たちの保育を振り返ることでもある
ここは、とても大切なポイントです。
例えば、
「なかなか友達との遊びが広がらない」
という子どもの姿があったとします。
そこで、
「この子は友達と関わるのが苦手」
と考えて終わるのではなく、
少し保育者側にも視点を向けてみます。
- 一人でじっくり遊べる環境は十分だった?
- 友達と自然につながれるような遊びや素材はあった?
- 保育者が関係をつなぎすぎていなかった?
- 逆に、必要なときに橋渡しができていた?
- 安心して自分を出せる関係ができていた?
子どもの姿を丁寧に捉えると、
「子どもはどうだった?」だけでなく、「私たちの保育はどうだった?」
という振り返りにもつながります。

- 子どもの姿を記録する。
- そこから育ちや学びを考える。
- 職員同士で話す。
- 環境や関わり方を見直す。
- そして、また子どもの姿を見る。
今回の改定に向けた議論では、このような保育の循環を大切にしていく方向性が示されています。
「10の姿」は、できた・できないを確認する表ではない
乳幼児期の評価を考えるときに、もう一つ注意したいのが、
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」
いわゆる「10の姿」です。
例えば、
「協同性はできている」
「思考力の芽生えはまだ」
というように、一項目ずつ子どもを当てはめていくものではありません。
「10の姿」は、一つずつ教えたり、卒園までに全項目を達成させたりするためのものではありません。
例えば、友達と大きな基地を作っている姿の中にも、
- 友達と考えを伝え合う。
- 素材の長さを比べる。
- 思ったようにいかず方法を変える。
- 共通のイメージをもちながら作る。
- 自分の役割を考える。
など、さまざまな育ちが重なっています。
先に「10の姿」の項目を見るのではなく、
まず目の前の子どもの姿を見る。
そこから、
「この遊びの中で、どんな育ちが見えているんだろう?」
と考える。
この順番が大切です。
「評価」と聞いて、新しいチェック表を作る必要はある?
現時点では、その必要はありません。
2026年8月現在、新しい保育所保育指針が告示されたわけではなく、新たな評価表やチェックリストを導入することが決まっているわけでもありません。
今回示されているのは、乳幼児期の評価をどう考えるかという方向性です。
ですから、
「改定されるらしいから、今すぐ新しい評価表を作ろう」
と焦る必要はありません。
むしろ今できるのは、
普段の記録を見ながら、
「この子の姿から何が見える?」
と職員同士で話すことかもしれません。
園内研修は「一枚の写真」からでもできる
例えば園内研修で、一枚の写真を用意します。
砂場で何かを作っている子どもの写真。
そして、
「このとき、この子は何を考えていたと思う?」
と職員同士で話してみます。
ある先生は、
「友達の真似をしていたのかな」
と考えるかもしれません。
別の先生は、
「昨日作ったものを、今日はもっと大きくしようとしていたんじゃない?」
と考えるかもしれません。
また別の先生は、
「この子、砂の硬さを確かめながら作っていたよ」
と気づくかもしれません。
どれか一つを正解にする必要はありません。
一人の保育者だけでは気づかなかった姿を、職員同士の対話によって考えていく。
こうした時間が、子どもへの理解を深めることにつながります。
取りまとめ案を踏まえて、普段の保育で意識したい3つのこと
ここからは、国の資料に示された具体的な方法ではなく、今回の方向性を普段の保育に置き換えて考えた一例です。
1.「何をした?」だけで終わらせない
「砂場で遊んだ」
だけでなく、
「その中で、この子は何をしようとしていた?」
まで考えてみる。
2.結果だけではなく途中を見る
「できた」「できなかった」だけでなく、
- 「どう考えた?」
- 「何を試した?」
- 「途中でどう変わった?」
を見る。
3.次の保育まで考える
「楽しんでいた」で終わらず、
「明日はどんな環境があると、さらに遊びが広がる?」
まで考えてみる。
特別なことを新しく始めるのではなく、普段見ている子どもの姿を、もう少し丁寧に考えてみる。
そこから始められるのではないでしょうか。

2026年8月現在、保育所保育指針はまだ改定されていない
最後に、現在地も確認しておきます。
2026年6月5日の合同会議では、これまでの議論を取りまとめる段階まで進みました。
ただし、2026年8月現在、公式に掲載されている資料は「幼児教育WG・保育専門委員会取りまとめ(案)」であり、新しい保育所保育指針がすでに告示・施行されているわけではありません。
現在、こども家庭庁が掲載している保育所保育指針も、引き続き平成30年度から適用されている現行版です。
そのため、今回紹介した内容は、
「新しい保育所保育指針ではこうなる」と決定した内容ではなく、改定に向けた議論の中で示されている方向性
として読んでください。
まとめ|「できた?」だけではなく、「この子の中で何が育っている?」
今回の保育所保育指針改定に向けた議論で、乳幼児期の評価について大切な考え方がより明確になってきました。
それは、
他の子と比べることでも、決められた基準への到達度だけを見ることでもない
ということです。
「できた・できない」を見ること自体がいけないわけではありません。
でも、そこで終わらない。
- この子は何に心を動かしている?
- どんなことを考えている?
- 何を試そうとしている?
- 昨日から何が変わった?
- どんなよさや可能性が見えている?
そんなふうに、一人一人の過程まで丁寧に捉えていく。
そして、
その子の姿を受けて、私たちの環境や関わり方をどうしていくか
まで考える。
評価という言葉は少し難しく感じますが、今回の議論を現場の言葉に置き換えると、
「目の前の子どもをもっと丁寧に理解し、その姿から次の保育を考える」
という、これまでも保育で大切にしてきたことにつながっているのではないでしょうか。
保育所保育指針の改定については、今後も新しい情報が示され次第、このシリーズで一つずつ分かりやすく整理していきます。
参照資料
- 文部科学省「教育課程部会 幼児教育ワーキンググループ(第9回)議事録」令和8年6月5日
- 文部科学省「教育課程部会 幼児教育ワーキンググループ(第9回)配付資料」令和8年6月5日
- こども家庭庁「幼児期までのこどもの育ち部会 保育専門委員会(第10回)」令和8年6月5日
- 幼児教育WG・保育専門委員会「取りまとめ(案)」令和8年6月5日
- こども家庭庁「保育所保育指針(平成30年度~)」
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