この記事では、次のことを整理します。
・保育所保育指針改定は、今どこまで示されているのか
・今回の中心キーワード「遊びの深まり」とは何か
・5領域や10の姿はどうなるのか
・現場の保育士が今から意識したいこと
専門用語も出てきますが、できるだけ現場の保育とつなげて見ていきます。
目次
保育所保育指針の現在の情報
保育所保育指針の改定について、少しずつ情報が出てきています。
保育現場で働いていると、
「保育指針って、また変わるの?」
「5領域はどうなるの?」
「10の姿はなくなるの?」
「今から何か準備した方がいいの?」
そんな不安や疑問を感じる保育士さんもいるのではないでしょうか。
保育所保育指針は、日々の保育、指導計画、記録、園内研修、幼保小接続にも関わる大切なものです。
だからこそ、早めに情報を追っておくことは大切です。
ただし、まず最初に確認しておきたいことがあります。
現時点で示されている資料は、まだ最終決定ではありません。
令和8年5月29日に示された資料は、「幼児教育WG・保育専門委員会 取りまとめ(案)」です。
つまり、今の段階では、「保育所保育指針の改定内容が決まった」というより、「改定に向けた方向性が示されている」と捉えるのが正確です。
この記事では、保育士さんが今知っておきたいポイントを、できるだけ分かりやすく整理します。
まず、保育所保育指針だけの話ではない
今回の取りまとめ案は、保育所保育指針だけを単独で扱っているものではありません。
資料では、次の3つがまとめて扱われています。
・幼稚園教育要領
・保育所保育指針
・幼保連携型認定こども園教育・保育要領
この3つは、資料の中で「3要領・指針」と表現されています。
幼稚園、保育所、認定こども園は、それぞれ制度上の違いがあります。
しかし、乳幼児期の教育・保育で大切にする内容については、施設の種類に関わらず整合性が図られてきました。
特に、現行の保育所保育指針では、保育所も「幼児教育を行う施設」あることが明記されています。
つまり今回の議論は、「保育所だけが大きく変わる」という話ではありません。
幼稚園・保育所・認定こども園を含めた乳幼児期の教育・保育全体を、
これからどう整理していくかという話だと考えると分かりやすいです。

今回のキーワードは「遊びの深まり」
今回の取りまとめ案で、特に大切なキーワードが「遊びの深まり」です。
保育ではこれまでも、「遊びを通して学ぶ」という考え方が大切にされてきました。
今回の資料では、その考え方をさらに深めるように、
子どもの遊びがどのように深まっているのか。
その遊びの中で、どのような学びが見られるのか。
保育者が子どもの姿をどう見取り、環境構成や援助につなげていくのか。
こうした視点が重視されています。
例えば、子どもが園庭で虫探しをしていたとします。
記録に「虫探しを楽しんでいた」と書くだけでも、もちろん子どもの姿は伝わります。
でも、これからより大切になりそうなのは、その一歩先です。
どこに虫がいそうか考えていた。
友達の発見に刺激を受けて、自分も探し始めた。
見つからない中で、石の下や草の中など場所を変えて試していた。
保育者の言葉かけをきっかけに、虫のすみかや動きへの関心が広がった。
このように、遊びの中で子どもが何を感じ、何に気づき、どう考え、どう関わっていたのかを見取ることが大切になります。
つまり、これからの保育では、「何をしたか」だけではなく、「その遊びの中で何が育っていたのか」を言葉にしていくことが、より重要になっていくと考えられます。
保育所保育指針の改定で「10の姿」はなくなるの?
保育士さんが気になるポイントの一つが、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」いわゆる「10の姿」です。
今回の取りまとめ案では、10の姿がなくなるとは示されていません。
ここは誤解しないようにしたいところです。
資料で課題として示されているのは、10の姿そのものではなく、10の姿の扱い方です。
現場では、10の姿が子どもの育ちを共有したり、小学校との接続を考えたりするうえで活用されてきました。
一方で、10の姿に注目が集まりすぎると、
5領域のねらいや内容とのつながりが見えにくくなる。
育みたい資質・能力との関係が分かりにくくなる。
子どもの姿を10の姿に当てはめるような見方になってしまう。
そうした課題も指摘されています。
今回の資料では、
・育みたい資質、能力
・3つの視点、5つの領域のねらい及び内容
・幼児期の終わりまでに育ってほしい姿
この関係性を明確にし、整合性を図る方向性が示されています。
つまり、10の姿を廃止するというより、5領域や資質・能力とのつながりの中で、10の姿の位置付けを整理していく
という理解が現時点では適切です。

保育所保育指針の改定で「5領域」は変わるの?
「5領域がなくなるのでは?」
「新しい領域が増えるのでは?」
という不安を持つ方もいるかもしれません。
しかし、今回の取りまとめ案からは、5領域がなくなる、新しい領域が増える、ということは読み取れません。
むしろ示されているのは、5領域を単独で見るのではなく、育みたい資質・能力や10の姿との関係の中で整理していくという方向性です。
保育現場で大切なのは、「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」をバラバラに見ることではありません。
子どもの遊びや生活の中で、それらがどのようにつながりながら育っているのかを見取ることです。
例えば、積み木で大きな建物を作る遊びの中にも、
体を使って運ぶ姿。
友達と相談する姿。
高さやバランスを試す姿。
「もっと高くしたい」と言葉で伝える姿。
完成したものを自分なりに表現する姿。
いくつもの領域につながる育ちが含まれています。
今回の改定に向けた議論は、そうした保育の捉え方をより分かりやすく整理しようとしていると考えられます。
保育士にとって大切な視点
今回の取りまとめ案には、「好き」を育み、「得意」を伸ばすという表現も出てきます。
これは、現場の保育士にとって、とても大切な視点です。
子どもは、自分の心が動いたものに関わりながら遊び始めます。
「面白そう」
「やってみたい」
「もう一回やりたい」
「もっとこうしたい」
こうした思いがあるからこそ、遊びは深まっていきます。
ただし、これは「好きなことだけを自由にさせればよい」という意味ではありません。
保育者が子どもの姿を理解し、環境を構成し、必要な援助を行うことで、子どもの興味や関心は広がったり深まったりしていきます。
子どもの「好き」や「得意」は、資質・能力の育ちにつながる大切な出発点として捉えることができます。

0歳から18歳までの学びを見通す視点
今回の取りまとめ案では、0歳から18歳までの学びを見通すという視点も示されています。
これは、乳幼児期の保育を小学校以降の準備だけとして見る、という意味ではありません。
0歳からの育ちや学びが、1〜2歳児、3歳以上児の遊びや生活につながり、さらに小・中・高等学校の学びにもつながっていくという視点です。
特に保育所や認定こども園では、0〜2歳児の保育を「生活のお世話」としてだけ見るのではなく、養護を基盤としながら、乳幼児期全体の育ちと学びを支えていくものとして捉えることが大切になります。
0歳児が安心できる大人との関係の中で、声や表情、体の動きで思いを表す。
1〜2歳児が身近な環境に関わり、探索を楽しむ。
3歳以上児が友達と関わりながら、遊びを広げていく。
こうした育ちは、急に切り替わるものではなく、つながっています。
今回の改定に向けた議論では、このつながりをより意識していく方向性が示されていると考えられます。
現時点で「決まっていないこと」も大切
保育所保育指針改定について考えるときは、分かっていることだけでなく、まだ決まっていないことを整理することも大切です。
今回の取りまとめ案からは、次のようなことは読み取れません。
・5領域がなくなる
・新しい領域が増える
・10の姿がなくなる
・保育時間の基準が変わる
・職員配置基準が変わる
・具体的な条文が確定した
つまり、現時点で「保育所保育指針はこう変わります」と断定するのは早いです。
正確には、「改定に向けた方向性が取りまとめ案として示されている」という段階です。
不安をあおるのではなく、何が示されていて、何がまだ決まっていないのかを分けて読むことが大切です。

保育士が今から意識したいこと
では、現場の保育士は今から何を意識しておくとよいのでしょうか。
まず大切なのは、活動名だけで保育を終わらせないことです。
「制作をした」
「散歩に行った」
「運動遊びをした」
「虫探しをした」
これだけではなく、その中で子どもが何を感じ、何に気づき、どう考え、どう関わっていたのかを見取ることが大切です。
次に大切なのは、記録や対話の中で、遊びの中の学びを言葉にしていくことです。
保育者が子どもの姿を記録し、振り返り、同僚と語り合うことで、子どもの理解は深まります。
そして、その見取りをもとに、環境を再構成したり、援助を見直したりすることができます。
これからの保育では、
なぜこの環境を用意したのか。
なぜこのタイミングで声をかけたのか。
なぜあえて見守ったのか。
この遊びの中で何が育っていたのか。
こうした保育の意味を、保育者自身が言葉にしていくことが、より重視されていくと考えられます。
保育指針改定は「遊びの価値」を問い直す流れ(まとめ)
保育所保育指針の改定は、現時点ではまだ最終決定ではありません。
しかし、令和8年5月29日の取りまとめ案からは、今後の方向性が少しずつ見えてきています。
特に大切なキーワードは、「遊びの深まり」です。
これからの保育では、子どもが何をしたかだけではなく、遊びの中でどのような学びが生まれ、どのような資質・能力が育っているのかを見取ることが、より大切になっていくと考えられます。
また、10の姿や5領域についても、なくなる・変わるといった単純な話ではなく、資質・能力との関係性の中で整理されていく方向性が示されています。
保育指針改定は、まったく新しい保育を求めるものというより、これまで大切にしてきた
「環境を通した保育」
「遊びを通した学び」
「一人一人の理解に基づく保育」
を、より深く、より分かりやすく整理していく流れなのかもしれません。
このシリーズでは、保育所保育指針改定に向けて、現場の保育士が知っておきたいポイントを一つずつ整理していきます。
次回は、今回の中心キーワードである「遊びの深まり」とは何かについて、さらに詳しく読み解いていきます。
参照資料
幼児教育ワーキンググループ・保育専門委員会
「幼児教育WG・保育専門委員会 取りまとめ(案)」
令和8年5月29日
資料3
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